整形外科
当院の整形外科は医師3名体制で、より多くの患者様に、より専門的な医療をおこなうため、受診については原則、紹介状と事前の予約が必要です。手術や入院が必要な方を中心に専門的な外来診療を行っておりますので、症状が安定している方、一般診療が適している方には近隣のクリニックへ通院していただき、症状悪化の際は紹介受診していただく、病診連携の形をとっていますので、ご理解願います。また、脊椎手術は現時点でおこなっておりませんので、手術が必要な方については専門病院へ紹介させていただきます。
■石巻市立病院整形外科の特色 |
1.肩関節外科
肩関節外科は宮城県内でも診断から治療までおこなう施設は多くはありません。
もちろん、保存療法が主体となる場合は、お近くの整形外科クリニックの先生にお願いすることになりますが、手術や手術に伴うリハビリテーションについては当院で受けることができます。関節鏡を用いた各種手術や人工肩関節置換術、反転型肩関節置換術などの専門治療をおこなっています。
☆ 肩関節鏡手術
1㎝程度の小さな切開を数か所におこない、肩関節専用の内視鏡や器具を挿入し、切除や縫合により病変を治療します。
(おもな対象疾患)
- 腱板断裂
- 反復性肩関節脱臼
- 肩関節拘縮
☆ 人工肩関節置換術(従来型)と反転型人工肩関節の違い
似ている手術ですが、各々適応が異なります。詳しくは主治医の先生に御相談ください
- 変形性肩関節症
- 重度の上腕骨近位端骨折
- 上腕骨頭壊死症
- 広範囲腱板断裂
- 腱板断裂性肩関節症
- 重度の上腕骨近位端骨折
2. 骨粗鬆症の診断・治療
石巻市立病院は石巻市骨粗鬆症検診の2次検診医療機関です |
骨は私たちが立ったり運動したりする際の支えになるものですから、より充実した生活を送るには骨を健康に保つことが大切です。中年以降、骨がもろくなっていく病気、「(原発性)骨粗鬆症」はその大敵です。骨の中をミクロで見ると、骨を作る細胞(骨芽細胞)と骨を溶かす細胞(破骨細胞)がいて、「骨を溶かしては作る」を繰り返しています。正常の骨は常に、まるで新築の家のように頑丈です。骨粗鬆症になると、破骨細胞の働きが強くなるために骨がもろくなります。骨折しやすくなり、腰や背中が曲がり、関節も悪くなり、寝たきりの原因となります。昔は年のせいだと諦められていましたが、この20年間ほどで骨粗鬆症の診断・治療法は劇的な発展を遂げています。
今や骨は増やせる時代になっています。
あなたの骨はどうですか? 骨粗鬆症は骨密度を測れば分かります。
気軽にお近くのクリニックで測定するか、石巻市骨粗鬆症検診を受けてみてはいかがでしょうか?
☆どんな治療をするの?
軽症であれば食事指導・運動指導・生活指導のみです。
重症になるほど投薬治療が欠かせません。
以前は数少ない内服薬が主体でしたが、現在では様々な効能の内服薬、注射薬が広く使用されています。
≪骨を増やす薬≫ 骨形成促進剤
- テリパラチド
副甲状腺ホルモンを基にして作られた薬で、投与方法は注射のみです。
(週1~2回の注射、毎日の自己注射) - ロモソズマブ
骨粗鬆症の原因物質のひとつ、スクレロスチンの作用を抑えることで、骨形成促進効果とともに骨吸収抑制効果ももつ新しい薬です。
(月1回の注射)
≪補助薬≫
- カルシウム製剤(内服薬)
昔は単剤で処方されたこともありますが、腸であまり吸収されないことが分かっています。併用で用いられます。 - ビタミンD製剤(内服薬)
本来食事から摂取されるべき成分ですが、骨粗鬆症の方では不足しているといわれます。腸管からのカルシウム吸収を促進するなど、重要な役割を果たすビタミンです。
≪骨が減るのを抑える薬≫ 骨吸収抑制剤
- SERM
女性ホルモンには骨吸収を抑制する効果がありますが、同時に女性ホルモンの投与は様々な副作用を起こします。
SERMは女性ホルモンが骨に作用する部分のみを薬剤化した薬です。(毎日内服) - ビスホスホネート製剤
比較的昔からある薬で、破骨細胞の活動を抑えることで骨吸収を抑制します。現在は錠剤、ゼリー剤、点滴、静注と剤型や投与期間も多岐にわたっています。 - デノスマブ
破骨細胞が成熟するのを抑える効果があり、強い骨吸収抑制効果があります。6か月に1回の皮下注射ですが、自己判断で中止すると、骨密度が急激に下がる恐れがありますので、投与日を守る必要があります。
石巻市立病院では右のDEXA装置で骨密度を測定します。日本骨粗鬆症学会の推奨に基づき、腰椎および大腿骨の骨密度を測定して診断しています。また、クリニックからの検査依頼も受け付けています。
3. 人工関節手術(股関節、膝関節)
人工関節手術は整形外科において今では一般的な手術法で、世界で初めての人工関節は1951年に発明されました。以降、素材・形状・手術法の進歩が進み、日本国内では年間10万人以上の方が手術を受けています。人工関節手術は変形性関節症(軟骨のすり減り)、外傷などにより関節機能が破綻した状態におこなわれる手術で、現在では肩関節・肘関節・指関節・股関節・膝関節・足関節と多岐にわたっています。世界で最も行われているのは人工膝関節・人工股関節の手術で、当院ではそれに加えて人工肩関節手術もおこなっています。
☆当院で使用している手術支援ツール① ~デジタル3Dテンプレーティングソフト~
2016年9月の開院時より導入・使用しています。 |
人工関節手術は、手術技術やリハビリもさることながら、適切な機種・サイズのインプラントを適切な位置に設置することにあると考えます。従来は、患者さんレントゲンを用いて2次元で計画を立てる方法が一般的でした。
当院では、デジタル3Dテンプレーティングソフトを用いて、図のように立体的にその患者さんそれぞれに合った術前計画を立てたうえで、手術をおこなっています。
☆当院で使用している手術支援ツール② ~手術支援ナビゲーションシステム~
2020年11月より導入しました。 |
当院では開院時より上記のデジタル3Dテンプレーティングソフトを用いて人工関節手術(特に股関節)をおこなってきましたが、2020年11月より手術支援ナビゲーションシステムを導入しました。デジタル3Dテンプレーティングソフトはあくまで手術計画であり、それを参考にしながら手術がおこなわれます。手術支援ナビゲーションシステムでは、手術中に骨にセンサーをつけることで、車のナビゲーションシステムのように、リアルタイムに患部の位置情報が認識・測定され、適切な切除量、設置角度や位置などが確認できます。
- デジタル3Dテンプレーティングソフトおよび手術支援ナビゲーションシステムの使用は、それぞれ特徴があり、症例に応じて医師が判断することになります。
当院で手術を受ける方は担当医師に御相談ください。
4. 骨折手術
当院の整形外科では骨折手術にも取り組んでいます。
「骨折ですか、ヒビですか?」、ちまたでよくある質問ですが、どちらも骨折です!
骨折とは、骨が外力に負けて連続性を失うことを言います。正常の骨でも交通事故、転落などで大きな力が加わった場合は折れてしまいます(高エネルギー外傷)。一方、つまづいたり尻もちをついたりしただけでも、骨が弱くなった状態(骨粗鬆症)では折れてしまいます(脆弱性骨折)。
高エネルギー外傷については様々な臓器の損傷、致命的損傷を伴うことが多いため、集中治療室があり、様々な診療科がある救急病院にお願いしています。当院では高エネルギー外傷以外の骨折について対応可能となっています。とくに高齢者の脆弱性骨折では骨折手術のみならず、その原因である骨粗鬆症の診断治療もあわせておこなっています(「2.骨粗鬆症の診断・治療」を参照)。
整形外科の手術を受けた後はリハビリテーションが必要なことが多いですが、当院では地域包括ケア病棟を利用して入院リハビリテーションを行うことが可能です。(上限60日、利用基準がありますのでご注意ください)さらに長期間に及ぶリハビリテーションが必要と判断された場合は、近隣の回復期リハビリテーション病棟を有する医療機関にお願いしています。
≪お願い≫
当院の整形外科の受診は原則紹介状と事前の予約が必要です。
皆様のご協力をお願いします。
また当科を受診された結果、症状が安定している方、一般診療が適していると判断された場合は、近隣のクリニックへ通院していただきます。
担当医のご紹介
職名 | 氏名 | 専門分野・資格等 |
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部長 | 大森 康司 |
○肩関節、股関節、骨粗鬆症、一般外傷
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(皆様へのコメント) 肩関節外科手術、人工関節手術(肩関節・股関節・膝関節など)、骨折手術を中心におこなっています。とくに反転型(リバース型)人工肩関節置換術については宮城県内でも数少ない手術可能な施設の1つとなっています。外来では骨粗鬆症治療にも重点をおいた診療をおこなっています。 |
職名 | 氏名 | 専門分野・資格等 |
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部長 | 千葉 仁志 |
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(皆様へのコメント) 人工関節手術や骨折手術などを行っております。また、腰部脊柱管狭窄、腰椎椎間板ヘルニアなどによる痛みに対してブロック療法などを組み合わせた保存療法を行っております。 |
職名 | 氏名 | 専門分野・資格等 |
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医員 | 藤盛 理子 |
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(皆様へのコメント) 骨折手術や骨粗鬆症治療を中心に診療を行っております。 |